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お気に入りと自由帳

フリーゲームを中心に好きなものの感想を書いています。 ※探索系のゲームと区別がつきやすいように、文章を読んで進めるタイプのものはADVであっても基本的にはノベルとして扱っています(ただし、ツクール製の場合などまれに例外があります)。制作者名を表記して欲しいという要望があれば、教えて頂けると嬉しいです。コメント返信等に関する注意書きは「はじめに」カテゴリに載せています。

一〇五度

佐藤まどか・あすなろ書房・2017年

椅子が好きな中学生が、「全国学生チェアデザインコンペ」というものに挑戦するという内容です。
「第64回 青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書に選ばれた本です。

椅子を作る過程が書かれた小説は今まで読んだことがなかったため、斬新に感じました。
普段はあまり意識せず椅子を利用していましたが、使用用途や座る人に合わせてデザインや座り心地などが丁寧に考えられていて、本当はすごいものだったのだと驚愕しました。

椅子そのものの魅力の他に、将来の進路や人間関係など、様々な興味深い要素がありました。
特に人間関係については、家族や友人、椅子作りに関わっている人といったいろいろな人が登場していて、それに対して抱く感想は読む人によって異なるものになりそうだと思いました。機会があれば、読書感想文コンクールの受賞作も読んでみたいです。

ちなみに、(面倒なので実行する予定はありませんが)もし私がこの本を元にコンクールのような約2000字の読書感想文を書くとしたら、将来の進路および主人公と父親との関係に焦点を当てます。
ほとんどの場面に共感でき、響くものがありました。

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14歳、明日の時間割

鈴木るりか・小学館・2018年

中学2年生の登場人物をメインとして、様々な人間模様が書かれた連作短編集です。
章ごとに、主人公となる人物が変わります。

ストーリーは、まさに青春といったものでした。
登場人物の多くはそれぞれに悩みを抱えていて、精一杯日々を過ごしています。中には身近に感じるものもありました。
そこに解決策等を示してくれる中原君というキーパーソンがいるのですが、彼の言動が格好良かったです。ちなみに、フリーゲームで例えると「スターズ☆ピース」の辻占君が近いかなと思います。

そして、このブログだからこそおすすめしたいものがあります。それは、最終章です。
最終章のテーマは、「小説を書くことが好きな人は、何故小説を書くのか」といったものです。このお話は、つい「何故フリーゲームを作るのか」に置き換えながら読んでしまいました。ほんの少しとはいえ私自身も一応作ったことがあるため、ラストに出てくる文章が心に響きました。

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さよなら、田中さん

鈴木るりか・小学館・2017年

貧乏な母子家庭で暮らしている女子小学生が主人公の物語です。
彼女の日常生活が描写された、連作短編集です。

この本に収録されているもののうちの1編は、現在公式サイトで全文公開されています。
それを読んではまったので、購入することにしました。

作者は、デビュー当時(去年ですが)中学2年生でした。それにも関わらず、本文から語彙力の高さや言い回しの巧さがうかがえました。
児童書以外の書籍に初めて触れたのが中学2年生の頃だった自分と比較して、読書レベルの違いに驚かされました。

この物語の好きなところは、シリアスな内容を想像しそうな設定でありながらも、話が重くなりすぎていないところです。
登場人物が悩みを抱える場面はあるものの、基本的には前向きに生きているため、希望が持てました。

全5編のうち1番好みだったのは、表題作であり最後に収録されている「さよなら、田中さん」です(この話がサイトで公開されているので、他の短編に触れた際、ネタバレを知った状態で読んだような複雑な気分になってしまいましたが)。
表題作では、語り手が主人公のクラスメイトである男子に変わります。彼の家族関係や学校での人間関係、中学受験に関わる描写に生々しさを感じました。
読みながら、現実はこの物語のようなものだと思えて、感情移入しやすかったです。

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スピンガール!  海浜千葉高校競技ポールダンス部

神戸遥真・メディアワークス文庫・2017年

女子高生が、競技ポールダンス部を作り仲間と共に活動するという内容です。
その過程では、さまざまな課題が出てきます。しかし、主人公たちはそれらを解決するために努力します。

この本を読む前は、ポールダンスは大人向けのお店で行われるものというイメージを持っていました(テレビ番組で紹介されていて見たことがあるものは大会の映像だったにも関わらず)。
けれども、この小説に触れて、間違いだったと思い知りました。

あとがきに書かれていたのですが、作中に登場する「競技ポールダンス部」やそれに関連する大会は架空のものです。しかし、競技としてのポールダンス自体は実際に行われています。
物語の中では、実在のポールダンスを元に練習風景や技の名前、曲に合わせた構成の仕方などが丁寧に書かれていて、読んでいると1種のスポーツだという気持ちになりました。

また、特筆したいのが、登場人物の人間関係です。
主人公をはじめとする部員たちは、誰もが悩みを抱えています。それが原因で、衝突し合ったり、演技に影響が出たりします。
中には乗り越えるまでに時間のかかるものもありますが、少しずつ問題に向き合っていき、良い結果を残そうとするひたむきさに惚れました。

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余った傘はありません

鳥居みゆき・幻冬舎文庫・2015年

双子の姉妹をはじめとする、様々な人間模様が描写された短編集です。
それぞれの物語は、他の物語のどこかにリンクしている部分があり、連作となっています。

構造が特殊であるため、読み始めたときは戸惑うことがありました。しかし、次第に世界観にはまっていきました。
どこにはまったかというと、ネタや仕掛けを交えながらも、人間のダークな部分に触れていたところです。

この本に出てくる登場人物は、精神的に問題を抱えているような人物がほとんどです。
けれども、背景描写はリアルで、このような人たちが日常に潜んでいる可能性、あるいは、いつか自分かそうなってしまうが可能性があるように思えました。

サイコホラーとして印象に残ったのは、「うちのハンバグー」という話です。
オチを知った後だと、作中と近い状況を、現実で見たことがあるような気がしました(おそらく気のせいなのですが)。
もう1つ、「↓ラブレター」という話も、インパクトが強いものでした。読んでいる間は気付かなかったのですが、後から仕掛けを知って、驚愕しました。

「面白い」という意味で好きな話は、「チェックメイト」と「濡れた未亡人」です。
前者は、作者が芸人ということもあり、お笑いが題材となっています。これに関しては、元ネタを知っている方が理解しやすいです。作者が自画自賛をしているような場面があり、笑えました。
後者については好きだと書くと、中身を知っている方には、どこの男子中学生かと言われるかもしれません。そのような物語です。文章から、そこには1つも描かれていない、全く別の情景を思い浮かべることができるところに、発想力のすごさを感じました。

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