鳥居みゆき・幻冬舎文庫・2015年
双子の姉妹をはじめとする、様々な人間模様が描写された短編集です。
それぞれの物語は、他の物語のどこかにリンクしている部分があり、連作となっています。
構造が特殊であるため、読み始めたときは戸惑うことがありました。しかし、次第に世界観にはまっていきました。
どこにはまったかというと、ネタや仕掛けを交えながらも、人間のダークな部分に触れていたところです。
この本に出てくる登場人物は、精神的に問題を抱えているような人物がほとんどです。
けれども、背景描写はリアルで、このような人たちが日常に潜んでいる可能性、あるいは、いつか自分かそうなってしまうが可能性があるように思えました。
サイコホラーとして印象に残ったのは、「うちのハンバグー」という話です。
オチを知った後だと、作中と近い状況を、現実で見たことがあるような気がしました(おそらく気のせいなのですが)。
もう1つ、「↓ラブレター」という話も、インパクトが強いものでした。読んでいる間は気付かなかったのですが、後から仕掛けを知って、驚愕しました。
「面白い」という意味で好きな話は、「チェックメイト」と「濡れた未亡人」です。
前者は、作者が芸人ということもあり、お笑いが題材となっています。これに関しては、元ネタを知っている方が理解しやすいです。作者が自画自賛をしているような場面があり、笑えました。
後者については好きだと書くと、中身を知っている方には、どこの男子中学生かと言われるかもしれません。そのような物語です。文章から、そこには1つも描かれていない、全く別の情景を思い浮かべることができるところに、発想力のすごさを感じました。
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