鈴木るりか・小学館・2017年
貧乏な母子家庭で暮らしている女子小学生が主人公の物語です。
彼女の日常生活が描写された、連作短編集です。
この本に収録されているもののうちの1編は、現在
公式サイトで全文公開されています。
それを読んではまったので、購入することにしました。
作者は、デビュー当時(去年ですが)中学2年生でした。それにも関わらず、本文から語彙力の高さや言い回しの巧さがうかがえました。
児童書以外の書籍に初めて触れたのが中学2年生の頃だった自分と比較して、読書レベルの違いに驚かされました。
この物語の好きなところは、シリアスな内容を想像しそうな設定でありながらも、話が重くなりすぎていないところです。
登場人物が悩みを抱える場面はあるものの、基本的には前向きに生きているため、希望が持てました。
全5編のうち1番好みだったのは、表題作であり最後に収録されている「さよなら、田中さん」です(この話がサイトで公開されているので、他の短編に触れた際、ネタバレを知った状態で読んだような複雑な気分になってしまいましたが)。
表題作では、語り手が主人公のクラスメイトである男子に変わります。彼の家族関係や学校での人間関係、中学受験に関わる描写に生々しさを感じました。
読みながら、現実はこの物語のようなものだと思えて、感情移入しやすかったです。
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