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お気に入りと自由帳

フリーゲームを中心に好きなものの感想を書いています。 ※探索系のゲームと区別がつきやすいように、文章を読んで進めるタイプのものはADVであっても基本的にはノベルとして扱っています(ただし、ツクール製の場合などまれに例外があります)。制作者名を表記して欲しいという要望があれば、教えて頂けると嬉しいです。コメント返信等に関する注意書きは「はじめに」カテゴリに載せています。

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術

泡坂妻夫・新潮文庫・1987年

ガンジーという名の男と2人の弟子が、ある宗教団体の秘密を探るという、ミステリー小説です。シリーズものの中の1冊らしいですが、この作品から読んでも問題はありませんでした。
著者名の漢字は正確には異なるのですが、変換できなかったため、「泡」と表記させていただきます。

ストーリーは、この本に登場する宗教団体の持っている秘密を知りたくなるものでした。
作中では、不思議な出来事がいくつか出てきます。終盤でそれら全てに関して、種明かしがされる点が楽しかったです。

けれども、ストーリー以上に語りたいと思ったものがあります。この本に隠されている仕掛けです。
これを知ったときびっくりして、それまでに読んだページを確認しました。そして、全てのページに仕掛けが施されていたことがわかり、すごいと思いました。
本文では、簡単な単語がひらがなで書かれていたり、その逆があったりします。それにも意図があり、理解できたときにはすっきりしました。

作者は、小説家だけでなく、手品師でもあったそうです。この作品の中にも手品らしい要素がいろいろと含まれていて、面白かったです。

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本の感想いくつか

普段は好きな作品そのものに対する感想を書いているのですが、今回は少し特殊です。
今回書くのは、好きなフリーゲームで触れられていたことにより、気になって読んだ本の簡単なまとめです。読んだ時系列順に並べています。

『ラヴクラフト全集(2)』
H・P・ラヴクラフト 著・宇野 利泰 訳・創元推理文庫・1976年

「クトゥルフの弔詞 ~夢声慟哭~」をプレイして、元ネタも読もうと思いました。何故「2」かというと、クトゥルフ神話のメインらしき「クトゥルフの呼び声」が収録されていたからです。
比喩表現が多いという点が1番強く印象に残りました。小説の方は、状況がよくわからないという部分も正直いくつかありました。
このわからなかった部分について、ゲームではイラスト付きで描写があり舞台も日本に変換されていて、全て分かったとは言えませんが大体は理解しやすかったです。

『江戸川乱歩傑作選』 
江戸川乱歩・新潮文庫・1960年

「牢-RAW-」や「もしも…幽霊屋敷に泥棒が入ったら…」など、江戸川乱歩作品がネタとしてくるフリーゲームは複数あります。
多くの人に影響を与えている江戸川乱歩という人物はすごいと思いました。
昔に書かれた小説でありながらわかりやすく、どれもオチにインパクトがありました。

『孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション(7) 』
江戸川乱歩・角川ホラー文庫・2009年

『江戸川乱歩傑作選』が面白かったので、ネット上で評価の高かったこちらも読みました。
主人公と友人の関係性と、後半からの盛り上がりが興味深かったです。
「孤島」に隠された秘密を知ったとき、「とんでもないことだけどもしかしたら昔はあり得たかもしれない」という考えに至りました。

『博士の愛した数式』
小川洋子・新潮文庫・2005年

「ミカガミカガミ」の影響で読みました。しかし、もしかしたら全くの無関係だったかもしれません。
双方に共通するのは、「ぼくの記憶は~分しかもたない」という一文が出てくるという点です。
他の部分は全て異なっていて、この一文自体も全然違う意味を持っていたところが面白かったです。

『罪と罰(上・下)』
ドストエフスキー 著・工藤 精一郎 訳・新潮文庫・1987年

「かみさまの心臓」でほんの少し触れている場面があり、興味を持ちました。
この小説は私にとっては、難易度の高いものでした。ネットで解説を調べながら読み、「罪」というものに対する考えは、人によって異なるのだと感じました。

『ジキルとハイド』
ロバート・L・スティーヴンソン 著・田口俊樹 訳・新潮文庫・2015年

「ユーラルーム」に影響されて読みました。
読んだのがゲームをクリアした後だったということと、表紙に作品の内容が書かれていたことで、読む前からオチはわかっていました。しかし、それに至るまでの過程が気になるものでした。
私の持った感想は、この本の最後に書かれている、訳者による解説とほぼ同じです。

個人的にはまったのは、『江戸川乱歩傑作選』に収録されている「芋虫」と、『ジキルとハイド』です。
中身を知っている方には、残酷なものが好きなのだろうと思われるかもしれません。けれども、理由はそうではありません。
どちらも1番の理由は、登場人物の置かれている状況を想像することで、「人間」という存在について考えされられたからというものです。

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おれがあいつであいつがおれで

山中恒・角川つばさ文庫・2012年(初出版は旺文社・1980年)

小学生の男の子と女の子の身体が入れ替わってしまうという内容です。
児童書ですが、読んだのは成人した後でした。それでも、かなり楽しめました。

今年、高校生の男女の身体が入れ替わるという映画が流行りました(小説は読みましたが映画はまだ見ていないので、あまり詳しいことは書けません)。
その映画に対して、以前テレビである漫画家が、「男女が入れ替わったらまず最初にすることがあるでしょう」といった、批判的な発言をしていました。
この意見を聞いたとき、そういったシーンが見たいなら『おれがあいつであいつがおれで』を読めば良いと考えました。

この作品では、男女の性差がはっきりと書かれています。メインの登場人物2人は、入れ替わることでこの違いを身を持って知ることになります。
人が成長していく上で、男子には男子、女子には女子特有に大変なことがあると学んでいく姿に好感が持てました。

また、2人が幼馴染であることも、この作品のポイントだと思います。彼らはお互いに関して、入れ替わった後に初めて知ったという事柄もあります。
相手がどのような人物であるか十分に理解しているつもりでも、実際はそうではなく、当人にしかわからないこともあるのだと感じました。

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給食のお兄さん

遠藤彩見・幻冬舎文庫・2013年

元一流シェフの男性が、給食調理員として働くことになるという内容です。
この作品はシリーズ化されています。現時点では、2冊目まで読んだところです。

主人公の第一印象は、正直に書くと、マイナスイメージしかありませんでした。
怖くて近寄りがたそう、子どもが嫌いなのに小学校で働くことを選ぶのは信じられないなどと考えていました。

しかし、気がついたらいつの間にか、格好良くてこのような人が実際にもいたら良いなと思うようになっていました。
仕事によって彼が成長したからというのもありますが、それだけではないような気がします。

舞台となっている小学校では、様々な問題が起こります。
現代の日本を反映しているような出来事が多く、子どもと接する機会の多い人ならば、身近に感じるのではないかなと思いました。

それらを主人公は、給食を通して解決していきます。
この作品のようにうまくいくことは、実際にはほとんどないかもしれません。
けれども、物語の中で成功している描写があると、すっきりとした気分になりました。

この作品を読むことで、かつて通っていた小学校の給食調理員のことを振り返りました。
箸の使い方を教えに来ていたことがあるような気がしますが、記憶が定かではありません。それ以外のことは、全く覚えていません。
そのため、名前を覚えられるくらい児童と関わりを持っている、この小説の給食調理員をすごいと思いました。

だからといって、実際に働いている給食調理員の方々がすごくない訳ではありません。
作中には、大量調理や安全管理の大変さも書かれています。自分には絶対にできないだろうというものが多く、尊敬できる仕事だと感じました。
また、働いている場所は異なるものの、自分の職業上、ノロウィルスの恐怖はよく理解できるので、安全面に関する描写には共感できました。

希望としては、ドラマかアニメといった、映像化されたものも見てみたいと感じた小説でした。

2017年10月5日追記……シリーズ3冊目も読みました。ラストがすっきりして、綺麗に終わっていたという印象を持ちました。

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悪夢のエレベーター

木下半太・幻冬舎文庫・2007年

バーテンダーの男性が、気が付くと見知らぬ男女とともにエレベーターに閉じ込められていたという内容です。
全3章あり、章ごとに主人公となる人物が変わります。

数年前、この小説を元にした漫画がインターネット上で紹介されていて、そこから存在を知りました。
当時、漫画の無料試し読みができたので読みました。その頃からずっと続きが気になっていて、原作を購入しました。

この本の帯には、「あなたの予想は100%裏切られる」と書かれていました。
このような一文を見ると結末を当てたくなるのですが、実際、先の予想できないストーリーでした。

まず始めに驚いたのが、漫画の試し読みにも描かれていた、1章のラストです。
そこでは、それまでの登場人物の会話の中に、おかしい点のあったことが明かされます。
主人公の説明があるまで、全然気付きませんでした。知ったときには、テレビで「アハ体験」と呼ばれている映像を見た後のような感覚を持ちました。
この作品で最も好きな場面でもあります。

その後も、驚くことがいくつかありました。
3章では、ある問題が起こります。それに対して、この章の主人公はどのようにして解決するのだろうと思いながら読みました。
プロローグに少しヒントがあったにも関わらず、結末も問題が起こった本当の原因も最後まで分かりませんでした。

意外な展開が連続するところが面白い作品でした。

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