武田綾乃・講談社文庫・2021年
女子高校生5人の心情が描写された連作短編集です。
長文になるため、最後の2段落を読んでいただくだけでも構いません。
この作品に登場する人物は、それぞれが異なった価値観を持っています。
しかし、価値観の違いを受け入れながらも、他者と関わっていこうとしているところに、魅力を感じました。
その中でも特に、言葉の扱い方について書かれていた点が印象に残りました。
最近ニュースサイトで読んだ記事に、「『実は傷ついてます。』絶対言わないで!最悪な『誉め言葉』があった!」というものがあります。
ちなみに、記事を載せていたのは、「beautyまとめ」というサイトです。リンクは
こちらです。
記事に書かれていた最悪な「誉め言葉」とは、「いい人」、「まじめだね」、「イケメン」の3つです。
この3つ全部を複数人から言われた人を知っているものだから、つい笑ってしまいました。
この記事に対しても私に対してもどう思おうが自由です。ただ、そのような発言をしている人が、全く同じ言葉を誰かから言われたらどう考えるのかは気になりました。
同じように、発言した人には全く悪気はなくても、言われた側が不快に感じる可能性のある言葉があります。
それが、この本で触れられている、「可哀想」という単語です。世の中にはいろいろな人がいるので、自分は不幸だから「可哀想」と言われると嬉しいというタイプの人もいるとは思います。
ただ、私の中ではこの言葉は、人から言われたくないし、人に言いたくもない単語の上位に入ります。その主な理由は、この小説及び井手上獏さんの解説に書かれています。そのため、かなり好感が持てる本でした。
また、井手上さんは解説で、「色々な人に関わることができる」という状況にいるため、「それを活かして価値観を無限大に広げて、まだまだ自分の知らない部分をどんどん知っていきたい」と書かれています。
一方、私の場合、色々な人に関わるために積極的に外に出ていくことは面倒だと感じます。勇気が必要なこともあります。
けれどもその代わりに、多種多様な価値観を持ったキャラクターが登場する、フリーゲームというものがあります。クリア後にあとがきを読んだりサイトを見たりすると、本編をプレイするだけでは気付けない、製作者の方々が持っている様々な考えを知ることもできます。
そして、フリーゲームに触れていなかったら、このような価値観を持っている方がいると知る機会はなかっただろうなと思うことが多々あります。
そのため、フリーゲームを通して価値観を広げたいと感じました。といったことを考えられるような、面白い小説でした。
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